ちょっと一息
Minimal Example 部門はここまで!
冒頭で,この本はいくつかの部門に分かれるという話をしたのですが,それの一番最初の部門である「Minimal Example 部門」はここまでで終了です.お疲れ様でした 😁
Virtual DOM やパッチレンダリング周りに興味がある人は Basic Virtual DOM 部門に進めばいいですし,コンポーネントをもっと拡張したければ Basic Component 部門,
テンプレートでもっと豊かな表現(ディレクティブなど)に興味があれば Basic Template Compiler 部門,script setup やコンパイラマクロに興味があれば Basic SFC Compiler 部門に進めば良いです.(勿論全部やってもいいですよ!!)
そして何よりこのこの「Minimal Example 部門」もひとつの立派な部門なわけですから,「そんなに深くは知らなくてもいいけど,全体的にサラッとやりたい!」という方はここまでで十分なのです.\
ここまでで何ができるようになった?
最後に,少し Minimal Example 部門でやったこととできるようになったことを振り返ってみましょう.
いつもみているものが何処の何なのか,分かるようになった
まず,createApp という最初の開発者インタフェースを通して,(Web アプリの)開発者と Vue の世界がどのようなふうに繋がっているのかを理解しました.
具体的には,最初にやったリファクタを起点に,Vue のディレクトリ構造の基盤とそれぞれの依存関係,そして開発者が触っている部分はどこのなんなのかというのが分かるようになっているはずです. ここらで今現状でのディレクトリと,vuejs/core のディレクトリを見比べてみましょう.
chibivue
※ 本家のコードはデカくてスクショに収まりきらないので割愛
小さいなりに,それぞれのファイルの役割やその中身もそこそこ読めるようになっているのではないでしょうか. ぜひ,今回触れていない部分のソースコードのコードリーディングにも挑戦してみてほしいです.(ぼちぼち読めるはずです! )
宣言的 UI の実現方法が分かった
h 関数の実装を通して,宣言的 UI はどうやって実現されているかということについて理解しました.
// 内部的に {tag, props, children} のようなオブジェクトを生成し、それを元にDOM操作をしている
h('div', { id: 'my-app' }, [
h('p', {}, ['Hello!']),
h(
'button',
{
onClick: () => {
alert('hello')
},
},
['Click me!'],
),
])
ここで初めて Virtual DOM のようなものが登場しました.
Reactivity System とは何か,どうやって画面を動的に更新していくかということが分かった
Vue の醍醐味である,Reactivity System がどのような実装で成り立っているのか,そもそも Reactivity System とはなんのことなのか,ということについて理解しました
const targetMap = new WeakMap<any, KeyToDepMap>()
function reactive<T extends object>(target: T): T {
const proxy = new Proxy(target, {
get(target: object, key: string | symbol, receiver: object) {
track(target, key)
return Reflect.get(target, key, receiver)
},
set(
target: object,
key: string | symbol,
value: unknown,
receiver: object,
) {
Reflect.set(target, key, value, receiver)
trigger(target, key)
return true
},
})
}
const component = {
setup() {
const state = reactive({ count: 0 }) // create proxy
const increment = () => {
state.count++ // trigger
}
;() => {
return h('p', {}, `${state.count}`) // track
}
},
}
Virtual DOM とはなんなのか,何が嬉しいのか,どうやって実装するのかが分かった
h 関数を使ったレンダリングの改善として, Virtual DOM の比較による効率的なレンダリングの方法について理解しました.
// 仮想DOMのinterface
export interface VNode<HostNode = any> {
type: string | typeof Text | object
props: VNodeProps | null
children: VNodeNormalizedChildren
el: HostNode | undefined
}
// まず、render関数が呼ばれる
const render: RootRenderFunction = (rootComponent, container) => {
const vnode = createVNode(rootComponent, {}, [])
// 初回は n1 が null. この場合は各自 process で mount が走る
patch(null, vnode, container)
}
const patch = (n1: VNode | null, n2: VNode, container: RendererElement) => {
const { type } = n2
if (type === Text) {
processText(n1, n2, container)
} else if (typeof type === 'string') {
processElement(n1, n2, container)
} else if (typeof type === 'object') {
processComponent(n1, n2, container)
} else {
// do nothing
}
}
// 2回目以降はひとつ前のVNodeと現在のVNodeをpatch関数に渡すことで差分を更新する
const nextVNode = component.render()
patch(prevVNode, nextVNode)
コンポーネントの構造とコンポーネント間でのやりとりをどう実現するのかが分かった.
export interface ComponentInternalInstance {
type: Component
vnode: VNode
subTree: VNode
next: VNode | null
effect: ReactiveEffect
render: InternalRenderFunction
update: () => void
propsOptions: Props
props: Data
emit: (event: string, ...args: any[]) => void
isMounted: boolean
}
const MyComponent = {
props: { someMessage: { type: String } },
setup(props: any, { emit }: any) {
return () =>
h('div', {}, [
h('p', {}, [`someMessage: ${props.someMessage}`]),
h('button', { onClick: () => emit('click:change-message') }, [
'change message',
]),
])
},
}
const app = createApp({
setup() {
const state = reactive({ message: 'hello' })
const changeMessage = () => {
state.message += '!'
}
return () =>
h('div', { id: 'my-app' }, [
h(
MyComponent,
{
'some-message': state.message,
'onClick:change-message': changeMessage,
},
[],
),
])
},
})
コンパイラとは何か,テンプレートの機能はどう実現されているのかが分かった
コンパイラとはどのようなものかについて理解し,テンプレートのコンパイラを実装することで,より生の HTML に近く,かつマスタッシュ構文などの Vue 固有な機能についての実装を理解しました.
const app = createApp({
setup() {
const state = reactive({ message: 'Hello, chibivue!', input: '' })
const changeMessage = () => {
state.message += '!'
}
const handleInput = (e: InputEvent) => {
state.input = (e.target as HTMLInputElement)?.value ?? ''
}
return { state, changeMessage, handleInput }
},
template: `
<div class="container" style="text-align: center">
<h2>{{ state.message }}</h2>
<img
width="150px"
src="https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/95/Vue.js_Logo_2.svg/1200px-Vue.js_Logo_2.svg.png"
alt="Vue.js Logo"
/>
<p><b>chibivue</b> is the minimal Vue.js</p>
<button @click="changeMessage"> click me! </button>
<br />
<label>
Input Data
<input @input="handleInput" />
</label>
<p>input value: {{ state.input }}</p>
<style>
.container {
height: 100vh;
padding: 16px;
background-color: #becdbe;
color: #2c3e50;
}
</style>
</div>
`,
})
Vite プラグインを通して SFC コンパイラの実現方法について理解した.
実装して template コンパイラを活用して,script, template, style を一つのファイルに記述するオリジナルのファイルフォーマットをどう実現するかについて理解しました.
vite プラグインでどういうことができるのか,transform や仮想モジュールについて学びました.
<script>
import { reactive } from 'chibivue'
export default {
setup() {
const state = reactive({ message: 'Hello, chibivue!', input: '' })
const changeMessage = () => {
state.message += '!'
}
const handleInput = e => {
state.input = e.target?.value ?? ''
}
return { state, changeMessage, handleInput }
},
}
</script>
<template>
<div class="container" style="text-align: center">
<h2>{{ state.message }}</h2>
<img
width="150px"
src="https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/95/Vue.js_Logo_2.svg/1200px-Vue.js_Logo_2.svg.png"
alt="Vue.js Logo"
/>
<p><b>chibivue</b> is the minimal Vue.js</p>
<button @click="changeMessage">click me!</button>
<br />
<label>
Input Data
<input @input="handleInput" />
</label>
<p>input value: {{ state.input }}</p>
</div>
</template>
<style>
.container {
height: 100vh;
padding: 16px;
background-color: #becdbe;
color: #2c3e50;
}
</style>
これからについて
これからは,より実用的なものにしていくにあたって,それぞれのパートをより詳しくやっていきます. そして,これから各部門でやることと,進め方(方針)について少し説明します.
どういうことをやるのか
この本の冒頭と重複する部分も多いですが,改めて.
ここからは 5 部門 + 付録 1 部門に分かれます.
Basic Virtual DOM 部門
- スケジューラの実装
- 対応できていないパッチの実装 (主に属性周り)
- Fragment の対応
Basic Reactivity System 部門
- ref api
- computed api
- watch api
Basic Component System 部門
- provide/inject
- lifecycle hooks
Basic Template Compiler 部門
- v-on
- v-bind
- v-for
- v-model
Basic SFC Compiler 部門
- SFC の基本
- script setup
- compiler macro
Web Application Essentials 部門 (付録)
この部門は付録です.Web 開発において,頻繁に Vue と共に利用されるライブラリの実装をします.
- store
- route
ここでは上記の 2 つを扱いますが,ぜひ他にも思いつくものがあれば実装してみましょう!
方針について
Minimal Example 部門ではかなり細かめに実装の手順について説明してきました.
ここまで実装してきた皆さんならば,もうかなり本家 Vue のソースコードを読めるようになっているはずです.
そこでこれ以降の部では,説明は大まかな方針までにとどめて,実際のコードは本家のコードを読みながら,もしくは自分で考えながら実装していこうと思います.
(け,決して,細かく書くのが面倒臭くなってきたとか,そういうことではないですからね!)
まあ,本を読んでその通りに実装するのは最初のうちは楽しいですが,ある程度形になってきたら自分でやってみるほうが楽しいですし,より深い理解にもつながるかと思います.
ここから先はこの本はある種のガイドライン程度に捉えて貰って,本編は Vue 本家にあります!